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聖歌は生歌

聖歌は生歌

年間第10主日

《A年》
 171 わたしたちは神の民
【解説】
 詩編50は、形式的な礼拝を戒め、神に逆らうものを叱責しています。この詩編の背景は、何らかの祭儀に関連して
いると思われますが、それが何なのかは、学者の間でも意見が分かれるところです。5節に述べられているように、
「契約」と「いけにえ」は、この詩編では、深く結びついています(出エジプト記24:5-8参照)。表題にある「アサフ」
は、ダビデの命令によって詠唱者の任務に就いたレビ人の一人です(歴代誌上15:17、16:5)
 答唱句は、全体に低音部を中心にして歌われますが、それが、かえって、答唱句で歌われる信仰告白のことばを、
謙虚に、しかし、雄大に力強く歌わせる効果があります。旋律が付点四分音符でことばを延ばしているところでは、
必ず、どこかの声部が、次に来ることばを、四分音符によって、八分音符一拍分早く歌い始め、ことばへの集中力を
高めるとともに、祈りの流れが継続するように、工夫されています。最後は、旋律が最高音のB(シ♭)に高まり、信
仰告白のことばを力強く結びます。
 詩編唱の基本的な旋律構造は、四小節目を除くと答唱句と同じで、答唱句と類似構造と言う点でバランスをとって
います。四小節目だけは、終止の和音が五の和音(=F-A-C)で、答唱句の冒頭に戻る(続く)ようになっていま
す。ちなみに、この答唱句で歌われる詩編は3つあり(他に、詩編50、詩編122)ますが、いずれも、神殿の祭儀に
関連しています。それででしょうか、詩編唱の部分は、やはり、神殿祭儀(おそらく「仮庵の祭り」)で用いられた詩編
81が歌われる、162 喜び歌え神に叫びをあげよ と同じ旋律が用いられています。
【祈りの注意】
 この答唱句で一番気になることは、早く歌いずぎることです。速さは四分音符=60くらいと指定されていますが、
一番早い速さ、と考えて歌ってもよいでしょう。冒頭「わたしたちは」は、確固とした信仰を持った、力強い p ではじめ
ましょう。「わたしたちは」から「かみ」へは、音域が広がりますので、少し cresc. すると、祈りが深まります。解説で
も書いたように、旋律が付点四分音符で延ばす間、すなわち、「わたしたちは」の「は」、「かみのたみ」の「み」、「ま
きばの」の「の」では、他のいずれかの声部が、八分音符一拍分早く、すなわち、四分音符でもって、次のことばを歌
い始め、祈りを継続させていますから、旋律をうたうかたがたは、この、祈りの継続が十分になされるように、付点四
分音符をできるだけしっかりと延ばすようにしましょう。これは、混声四部で歌われない場合でも、オルガンの伴奏が
その役割を果たしていますので、忘れないようにしてください。この、付点四分音符の後は、なるべく、一瞬で息を吸
うようにしますが、しゃっくりをしたようにならないでください。特に、最後の「むれ」は、最高音で歌うので、どうしても、
「れ」をぶつけるように歌いがちですが、祈りの終止としては一番よくない歌い方です。乱暴にならにように、やさしく、
しかし、芯がしっかりした声で、祈りが神に昇ってゆくようにしたいものです。
 第一朗読では、ホセアの預言が読まれます。ホセアは紀元前8世紀に活躍した小預言者の一人で、「愛の預言
者」とも言われます。「愛」と「知る」(知的認識以上に、人格的な交わりをあらわす)が今日の、朗読でもそれぞれ、
二回と三回出てきます。ホセアは、いけにえや献げものが形骸化することを批判し、神との人格的交わり、神の本質
である愛=神への愛と隣人愛、を大切にするように教えています。詩編に出てくる「契約」も、神との人格的な交わり
がその本質であり、「正しい道を歩む」ことが、神を愛することにつながります。
 「わたしたちは神の民」と言うことは、第一朗読や詩編の語る愛が、単に、神だけとの関係にとどまらず、神の民の
群れとなった、わたしたちのうちにも実現することが示されています。
【オルガン】
 答唱句は、tranquillo =静かに、という表情にふさわしい、落ち着いたストップを選ぶようにしたいものです。答唱詩
編の基本であるフルート系の8’+4’を用いますが、特に4’にいえることです。場合によっては、16’を入れてもよい
かもしれません。伴奏では、早く歌いすぎることがないように、ペダルが使えるとよいでしょう。バスの音はそれほど
難しくないので、ペダルを使ったことのない方も、ぜひ、挑戦してみてください。この答唱句の場合は、会衆が早く歌
いすぎた場合、オルガンが抑えることが重要になります。会衆の祈りが落ち着いたものになるようにしてください。




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